ぱんぴっと! インタビュー記事

NPO法人学生人材バンク学生プロジェクト「ぱんぴっと!」。鳥取で活躍する魅力的な社会人へのインタビュー記事を掲載していきます。

「どう在りたいかが大事。自分をしっかり持って、いろんなものをいっぱい見て」 ハーモニィカレッジ理事長 大堀貴士さん

 

 

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目次

 

 



[所属 名前]


認定NPO法人 ハーモニィカレッジ理事長
大堀貴士さん

 

 


[インタビュアーからのひとこと]

お話しているだけでホッとする、

包み込むようなあたたかさが伝わってくる方です。


働く楽しさを教えてくれる社会人がそばにいるだけで

将来を考えるのがこんなにも楽しくなるんだな

と思いました。

 

 

 

 


[職業・仕事内容]

 


Q. ご職業と仕事内容を教えてください。


A. 認定NPO法人 「ハーモニィカレッジ」の

 代表をしています。

 


そこでは社会教育の場をひらいていて、

事業としては主に、

 

ポニーパーク:週末の子どもの居場所、体験活動の場づくり


ポニーキャンプ:主に県外の子どもたちを対象に

長期休みで合宿(年間約400人が参加)、


牧場ようちえん「ぱっか」:県の条例認証を受けて森のようちえんを開設


ポニー教室:一般の子どもたち向けにポニー遠足、出張ポニー教室など


因幡ふれあい乗馬:大人の乗馬会。

20代~70代までが参加。

日常生活の中に「馬との時間」を!


ホースマンシップ:馬のトレーニングを通じて

人がコミュニケーションを学ぶ

 


などがあります。

 

ホースマンシップ事業は、

コミュニケーションの取り方を学んでもらうこと

を目的にしています。

 

 

馬をトレーニングすることって、実は自分のコミュニケーショントレーニングにもなっているんです。

 

 

よく言われる「社会人基礎力」の中に、人と人の関係性があります。

会社をやめる理由の多くが人間関係のようです。

 

そういうコミュニケーションを人と人でやるよりも馬とやって、

結果的にそれが人同士のコミュニケーションと同じだ

ということに落とし込みたい、と考えています。

 


コミュニケーションをとる時、

一方的に自分が言っても相手が理解してなかったら、

それはコミュニケーションがとれたとは言えないですよね。

 

 

伝えて、伝わったことがコミュニケーション。

 

それは人と馬でも同じ。

伝えても馬が理解できなかったらそれは相互に

理解したことにはならない状態だから、

絶えず互いに理解し合える関係をつくる勉強を

しよう、という事業です。

 

お題目は「馬をトレーニングすること」なんですけれどね。

 

 


うちに事業の特徴としては

全ての事業に馬が絡んでるということと、

大学生のボランティアが関わってくれていることです。

 

大学生には地域のひと、

子どもと大人のつなぎ役として居てもらっていて、

大学生は潤滑油的な、全体を円滑につないでくれる

存在やなぁと思っています。

 

 


[学生時代のこと]

 


Q.どのような学生時代でしたか?

A. 大阪工業大学出身で、

 光ファイバーの研究などをしている学科にいました。

 


理系の科目が得意だったのと

経済的な苦しさを子どもながらに感じていたため

お金には困りたくないという思いがあり、

「就職する時に有利な専門職、高給取り、

 お金持ちになりたい」という思いから

その大学に進学することを決めました。

 


学校外の活動ではボランティア活動をしていました。


もともと子どもの時から野外活動に行くのが好き

キャンプしたり山に登ったりしていました。

 

その時にいた大学生がかっこよかったんです。

大きくなって自分もあぁなりたいなと思っていたので

専門職を目指しながら学外ではボランティアを

しながら過ごしていました。

 


大学って普通は4年だけど、僕は6年かかりました。

大学に気に入られたのかな(笑)

やりたいことと学業のバランスを崩してしまって…。

 


留年するって決まったとき、色々考えました。

「お金のために」と思って大学に入ったけど、

それをすごくやりたいわけでもない。

子どもと関わっている自分は大好きだったけど、

仕事にはならない。

 


留年が決まった2年間、ネガティブな事象でも

ポジティブな側面があるっていう捉え方を

できるようになってて、

 

それは子どもたちとの関わりの中で仲間たちと

いろんな悩みを経験した時、

「この2年間があってよかったと思えるように

 これからを過ごそう」と決めました。

 


これまでいた4年間とまったく違う時間の使い方を

しようと思い、行ったことのないところへ行ったり、

会ったことない人に会いに行ったり、

旅に出たりしました。

 

できるかどうかは分からないけど

とりあえずやってみようと思って。

今までほとんど読まなかった本も読むようになりました。

 

 


人生について仲間たちと話すなかで、

自分の人生は一回きり。

親のため、大学の教授のために生きるわけでもない。

自分で考えて切り開いていくものやと思ったんです。

 

 

自分はどう在りたいか、生きたいかを考えた時、

自分自身に問いかけるようになりました。

 

お金を稼いで何をしたいんだろう?

そんなにないなぁ。


良い車乗って良い家住んで、

俺の人生そんなんで終わっていいのかな、って。

 


人生を考えた時、子どもと向き合ってるときに、

自分の内面がふつふつと燃え上がる瞬間があって、

「めっちゃ生きてる、役に立ってる」って、

すごく喜びを感じる瞬間がありました。

 

それを探っていくと、

自分が何かしたことによって人が力をつけてくれたり

子どもが成長した瞬間に立ち会えたとき

めちゃくちゃ嬉しくなることに気づいて。

 


「どうありたいか」がすごく大事で、

自分は人生を通してどんな存在になりたいか

考えた時、人の可能性、未来の力をのばせる存在に

なりたいと思いました。

 

 


このタイミングでこの言葉に出会う⁉

と思うようなことが沢山あって、

惹きつけられるようにそういう本を読み漁りました。

 


その中でも印象的だったのが、

ネイティブアメリカンのある言葉。

 

 

「あなたが生まれた時、あなたは泣いていて

周りは笑っていたでしょう。

あなたが死ぬとき、あなたは笑っていて、

みんなは泣いてる、そんな人生を送りなさい」

 

その言葉を見た時、自分の中にバーンと入ってきて

こんな生き方をしたい!と思いました。

 

そしたら俺は、光ファイバーではないなと思って、

そんな時に、ハーモニィカレッジを立ち上げたばかりの

石井さん(創設者)に出会ったんです。

 

 

 

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彼はお金があるようには見えなかったんだけど、

「絶対会ってほしい」と仲間の一人に言われて

鳥取まで会いに来ました。

行ってみると、集落の中に小さな畑の一角に

馬が何頭かいて、自分の中の「牧場」の定義が

ゆらいだ瞬間でした。(笑)

 

「どうだい?良いだろう」と言われて

その時は素直に良いとは思えなかったけど、

その牧場は子どもたち、地域の人たちと

手づくりで完成させたものなんですね。

 

 

その時、日本一小さな牧場は、

日本一あったかい牧場なんやなぁって思ったのを

覚えています。

 

その晩、子ども、地域の人、馬が集まって

ビールを飲んだのだけど、

小学生がお酌にきてくれたことにびっくりして。

 

その子は周りを見て、自分から動いていたんです。

いきいき動いている子どもたちに

衝撃を受けましたね。

 


次の日、馬の乗り方を教えてくれたのは、

石井さんと一つ屋根の下で暮らしている、

困り感を抱えて親元を離れて暮らす子どもたちでした。

 

教育や知識は「大人が子どもに教えるもの」だと思っていたからかなり衝撃的でした。

 

自然と子どもが育っているところを見て、

こんな風に子どもの力をのばせるようになるんやな

と思って、そこから自分の将来の進路は

そっち方面に舵を取るようになりました。

 

 

いろんな人に自分で連絡して会いに行って、

輝いてるかどうかを確認しに行っていました。

 


どこも悪くはなかったけれどピンともこず、

そんな時に石井さんだけは違っていました。

彼から「1年間一緒にやってみないか」と言われて、

「やります!」って即答しました。

 

 

 

 

[就職までの道のり]


Q. そこから今に、どうつながっていますか?

A. 大手の内定を蹴って鳥取の牧場で働くことを

決意したんだけど、初任給は5万円、

バイトの時より少なかったです。

 

でも、不安はなかった。

「この人と働いて、切り拓いていきたい」

という思いでいたし、毎日が楽しくて、

こんなに仕事って楽しいんだ!という感じでした。

 



「大卒のシュート(←大堀さんのニックネーム)

 に十分なお金を出せるわけでもない、

 いつまで続けられるかも分からない。

 自分の夢に巻き込むことはできない」

 

 

とも言われたけれど、

 

「自分が頑張ればいい、それでダメになっても

 後悔はないから一緒につくっていきたい」

と伝え、2年目から二人三脚で

やっていくことになりました。

 

21年続けてきて

大変なことももちろん沢山あったけど、

一回もやめたいと思ったことはないし、

石井さんというカッコイイ大人との出会い

大きかった。

 

前までの自分を絞っていた

「ねばならない」生き方から

「やりたい生き方」へ考え方が変わり、

今はやりたいように生きています。

 

 

 

[「教育」 とは?]


Q. 大堀さんにとって「教育」とは、

 どのようなものですか?



A. 基本的に、育てるではなく、 育つ

 という考え方です。

 

広辞苑で「教育」を調べると、「アプローチをして

変化させること」と書かれているけれど、

子どもを変えようとするんじゃなくて

大人は子どもが何かやりたくなるような

きっかけをつくることだと思います。



昔、不登校の子で

馬を育成するゲームが好きな子がいました。

「そんなに好きなら本物の馬のところに行っておいで」

と親にいわれ、その子は馬とのくらしを始めました。

 

それまで全然朝も起きられなかったのに

馬のために朝は起きるし、ものすごい考えるんですね。

 

そんな日々を重ねていくと、

「馬について勉強するために高校行きたい」

→「てことは高校行くために勉強しなきゃ」

と子どもは気づき、勉強するようになりました。


こんな例は馬だけじゃなくて、他にもいっぱいあります。

 

子どもがやりたいこと、

なりたい自分を思い描いている時、

一緒に寄り添ってあげることが大事。

 


好きなことが見えたら子どもはグングン進んでいくし

分からないことがあったら子どもから聞いてくる。

大人はそれに答えるだけ。


子どもの内面にあるものを引き出すことが教育かな。

伴走する大人がいるだけで子どもは安心する。

やりたいこと、なりたいものを一緒に見てあげる、

それから子どもに見えている世界はまだまだ狭いから、

いろんな人に出会わせたり、いろんなところに

連れていったり、体験させたりすることも大事。

 


スモールステップを踏みながら生活していると、

子どもには「いっぱい助けてもらっている」

という感覚もつく。

 


学校は、行きたくなれば行けばいいし、

行きたくなければ様々な事を学べる環境を

作ってあげればいい。


ただ、学校は学べることがいっぱいあるし、

環境として整っているから

うまく利用できたらいいと思う。


不登校とか引きこもりでも、

その子はきっと大丈夫!って信じて

寄り添ってあげることができれば、

また道は拓けます。

 



[大切にされていること]


Q. 仕事をする上で大切されていることはありますか?

A. スタッフにも子どもにも、心から

 「それでいいんだよ」と伝えることかな。

 


朝起きれなくても、宿題してなくても、

何もしてなくても、それでもいい。


居場所のない子どもたちはそう思ってもらえることで

「居ていいんだ」と感じることができます。

 


存在を認めてもらえることがベースにあると、

褒められても叱られても子どもたちは受け取ってくれる。

絶えず「承認」がベースにあることが大切。


子どもにとって、普段から自分は見てもらっている、

心を向けてもらっていることを感じれることは

とても大事。

 


存在自体を否定されると居場所がなくなり、

自己否定感も強くなってしまいます。

行動は否定されることがあっても、存在は否定されない。


「できるあなたでも、できないあなたでもいい」

って、いつ如何なる時も「承認」することを

大切にしたいと思っています。

 

 

 

[今後の目標]


Q. 今後の目標を教えてください。

A. 居場所をつくっていきたいです。

 


今はまだいろんな人の居場所になりきれていないけど、

でも、すべての人がそこにいていいんですよね。

子どもも大人も、年配の方も、障がいのあるなしも、

外国人も関係なく。

 



居場所で大切なのは場所ではなくて、

そして、寛容な気持ち


「この人がいるから行ってみようかな」

と思える人がいることが大事。

 


目指しているのは、サラダボールみたいな居場所。

レタス、ハム、きゅうり、大葉…。


いろんな人がそのままで居ていい。

人が集まって多様性があればあるほど

よくなる空間って素敵だよね。

 


あとは、好きで、得意で、誰かのためになり、

未来のためになる四方良し!

自分も相手も周りも、未来も嬉しくなる、

win win win winの事業をつくっていきたいです。

 

 

 

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[学生へのメッセージ]


Q. 最後に、学生へのメッセージをお願いします!

A. 職業、就職先を見つけるんじゃなくて、

 なりたい自分を思い描き、どう生きたいかを

 見つけてほしい。

 それが「どう働きたいか」につながるから。

 

 


そのためには、自分の世界を広げること。

大学生はよくアルバイトしてるけど、

時給800円より自分らはもっと価値がある。

 

社会人になったらお金はあるけど時間はない。

 

会いたい人にも会いに行けなくなる。

お金は後からいくらでも挽回できる。

だから、学生の間は、必要な分だけ稼げばいい。

 


見てる先を、自分の人生の目標から逆算して

どんな自分で在りたいかを大学生のうちに

見つけてほしい。

 

幸せのために家が必要なら買えばいいし、

最終は幸せになってくれたらいい。

 

どんな自分で在りたいかは、途中で変わってもいい。

進みながら広がっていくものだから。

 


人生っていうのは自己実現

自己実現の「自」は今で、「己」はゴール。


今からゴールへ向かう双六のようなものかもしれない。

コマが進んで「己」につくと、

そこに行かないと見えない世界が広がる。

 

逃げないといけない時は立ち止まればいいし、

自分が自分でなくなりそうだったら

辞めてしまえばいい。

頑張れなくなったら、エスケープできる場所がある。

それが居場所。

行ってみて、やってみて違ったらやり直せばいいしね。

 

 


相対的に見て焦ってることも、

広い視野で、世界規模、宇宙規模で見たら

大したことではないと思えるかもしれない。

自分をしっかり持って、いろんなものをいっぱい見て。

 


「この人すごい」と思う人に会っても、

“自分”がなければ聞きたいことも出てこない。

 


それから、俯瞰する目が大事。

鳥の目、虫の目、魚の目。

いろんな目線を持って、柔軟な視点で。

時にはフォーカスするものを変えてみることも必要。

 


たとえば僕は、日によって教育的な本、

経済的な本、ゆるく読める本…と、

意識して読む本のジャンルを変えています。

 

 

興味があるものを見ていると、

興味があるものしか見ようとしないから。

「興味ないな」と思う部分にも、

意外と自分が欲してる情報があったりするんだよ。


 

 

最後に、働くのって楽しいよ!

やりたいことやってお金もらえるんだから。


ジョージアのCMで、

『世界は誰かの仕事でできている』

ってあるけど、本当にその通り。

 


商品、サービスの向こう側に、人がいる。

だから仕事って、必ず何か(誰か)の役に立っている。

そんな風に思ったら、楽しくなるよね。

 

「つながっている」という想像力を持って、

大学生は如何ようにも過ごせるから

自分の人生について色々考えてみてほしいです。

 

 

 

 

 

 


インタビュアー : 大國、佐伯
文責 : 佐伯