ぱんぴっと! インタビュー記事

NPO法人学生人材バンク学生プロジェクト「ぱんぴっと!」。鳥取で活躍する魅力的な社会人へのインタビュー記事を掲載していきます。

「臆病にならず、様々なコミュニケーションを通じて切磋琢磨できる関係を築いてほしい」 鳥取県人権文化センター専任研究員 中尾和則さん

「臆病にならず、様々な人とコミュニケーションを通じて切磋琢磨できる関係を築いてほしい」
鳥取県人権文化センター専任研究員 中尾(なかお)和則(かずのり)さん

 

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中尾和則さん
【インタビュアーからの一言】
 世界80カ国を旅されて気づいたこと等、貴重なお話をして頂きました。
お話ししていて、個人の幸せだけでなく、社会全体の幸せについて考えている、とても視野の広い方だなと思いました。遠く離れた地域で困っている人たちに対して、何かできないかと常に考えて行動されている人です。

 

◦名前、職業、最近のこと
◦お仕事について
◦人権に関する職業に就いた理由
鳥取地球人クラブ
◦海外へ旅するようになった原点
UNICEFの活動
◦今後の目標
◦学生へのメッセージ

 

名前、職業&最近のこと

角田:今日はよろしくお願いします!
まず、お名前とご職業を教えて下さい。

中尾:中尾和則です。鳥取県人権文化センターの専任研究員をしています。
鳥取地球人クラブ」の代表も務めています。

 

角田:中尾さんは色々な国を旅されたのですね。

中尾:はい。若いころから旅、冒険が生きがいです!あちこち行って、トータルで80カ国行きましたね。楽しかった。

 

角田:昨日は何をされていましたか?

中尾:倉吉での講演会でお話をしていました!
オフの時は海を眺めながらボーとしたり、本を読んだりしています。本は何でも読むし、好奇心が強く、何にでも興味を持ってしまうので自制しないと何でもやっちゃう(笑)

 

角田:最近ウキウキすることとかがあれば教えて下さい。

中尾:10/13日にブータンのプリンセスが光澤寺に来られるイベントがあるので、それが嬉しいです!
今日もやり取りしていました。来られることが決定して嬉しい!

 

 

お仕事について

~難民キャンプや貧困地帯に行ったことで、平和や人権についていろいろ考え始めました~

角田:現在、鳥取県人権文化センターでどのようなお仕事をされているのですか?

中尾:主に講演と、小冊子作成による人権啓発活動をしています。差別や人権侵害にあたる行為、人権尊重や人権保障のことなどを分かりやすく示したパンフレット等を作成しています。


角田:専任研究員をされているのですね。どのような研究をされているのですか?

中尾:同和問題(部落差別の問題)や男女共同参画など、人権に関わる様々な個別テーマについて聞き取りなどを行って小冊子を作成したりしています。
去年は「超高齢社会の人権尊重」というテーマで聞き取り調査をして、小冊子を作りました。

 

石井:どういった方々にインタビューをされたのですか?

中尾:日本の超高齢社会についての研究をしていたので、鳥取県内の高齢者や施設の介護職員さん、また、高齢者施策等に関わる行政職員さん、市民後見人等に聞き取りを行いました。
日本は世界一の「超、超、超高齢社会」です。なかでも鳥取県は、65歳以上の高齢者の割合が31%の超高齢社会なんです。
「生きがいって何ですか?」等、自分の好きなことをがんがんやっている高齢者にインタビューをしました。


角田:鳥取県内で「学習会」を開かれているそうですが、「学習会」とは何をする会なのですか?

中尾:学習会っていうのは、学校、地域、会社、あちこちでやっている人権についての勉強会のことです。
地域や会社、学校や行政が主催しているので、その主催者に依頼されてお話をしに行きます。
大雑把に言うと、「人と人が尊重しあわなければいけませんよ」等の話をしています。セクハラ、パワハラ等も人権学習の対象領域です。これらの人権侵害が起こらないよう、また、啓発活動として年間80回くらいは講演をやっています。鳥取県内が多いです。

昨日は倉吉で講演をしてきました。タイトルは「世界80カ国を駆け巡って」。あちこち旅した中での経験に基づいた話をしてから、最後に人権の話につなげてビシっと締めました。

 

角田:なぜ、人権に興味を持たれたのですか?

中尾:人が生きるにあたってとても大切なものだと思うからです。
40歳頃まで正規職員として働いたことがなく、外国に出てばっかりでした。世界あちこち行ったり、農業したり。
その時、アフガニスタンの難民キャンプや、インドの貧困地帯に行ったことで、平和や人権についていろいろ考え始めました。
たまたまという流れでもあるけど、世界を見てきたことが今の仕事に繋がっています。


鳥取地球人クラブ

~戦争、難民の方々に対して何かできないか~

 

角田:何故「鳥取地球人クラブ」を設立されたのですか?

中尾:アフガニスタンの難民キャンプに暮らす難民を支援するために立ち上げました。
上海からローマまで15,000㎞、ユーラシア大陸を通り抜けたことがあって、その旅の途中で、アフガニスタンでの戦争や旱魃等によって発生した難民の存在を知り、その時から何かできないかと考えていました。

そのずっと後ですけれど、2001年の9月11日に、ニューヨークの高層ビル等を狙った「アメリカ同時多発テロ事件」が起きました。いわゆる「9,11*1 」という大規模なテロ事件です。この事件の後、アメリカがアフガニスタンを攻撃します。そこで、多くの難民が発生し、このことが、メディアで大きく取り上げられました。〝アフガニスタン難民〟というものに興味を持つ人が多くなりました。そこで、当時は「9.11の同時多発テロ事件」や「アフガニスタン難民」について、公民館の生涯学習講座や平和活動の集会等、様々なところで事件の状況解説や難民キャンプ等の現地の様子についての講演をして回りました。戦争それ自体を止めることや、難民に対して何かできないかと考えながら。ずっと以前、難民キャンプで知り合った人もいたので、彼らのことが心配になったからというのもあります。それと、社会問題や国際問題に関心があったから。
それが「鳥取地球人クラブ」を結成したきっかけです。今は、旅好きな人や社会・国際問題に関心がある人が集まっています。

 

海外へ旅するようになった原点

~現地の伝統的な生活にまみれて生活している人と話すことが好き~

 

角田:初めて行った国を教えて下さい。

中尾:タイです。
二十歳の大学生の時に、タイとミャンマーの両方にまたがって生活しているカレン族という少数民族がいます。「ミャンマーで暮らす少数民族が虐げられているので支援しに行かないか」と誘われたのが初めての外国に行ったきっかけです。

 

石井:では、観光とか留学をしに行ったのではなく?

中尾:はい。留学の為に海外に行こうとは、今でも思いません。あまり興味がありませんね。その国の文化・伝統にどっぷりとつかって、地に足を着けて生活をしている人達と話をする方が好きなんです。

いわゆる発展途上国から日本に来て、企業で仕事している人や留学生として大学で勉強している人等は、その国で言えば、お金持ちであったり、今風の生活をしている人であったりすることが多いように思います。僕はどちらかといったらそういう人達より、自国の文化歴史に根ざして、その国で地に足を着けて働きながら、伝統的な生活と向き合っている人と触れあうことの方が好きです。

アフガニスタンなど「危ない人たちばかりいるところ」と認識している人が多いと思いますが、そんなことはありません。
イスラム教は、「アッラーの神」のもとに皆平等なんだという理念があります。世界が近代社会へと変容する中で経済格差が生まれて、貧困家庭が増えていく、それに抵抗したイスラム神学生たちが過激化しているという部分はあるかもしません。

「差別」「偏見」っていうのは、よく分からない人たちに対してひとくくりにして、マイナスのレッテルを貼り、蔑み、拒絶すること、自分の生活と直接の関わりが無ければないほど、そういう「差別」や「偏見」をしてしまうこと。


角田:印象的な国はどこですか?

中尾:インドです。
インドに行くと、人に対しての関わり方が濃い!恥じらいが感じられず、いい意味で楽天的。
インドに行けば、「なんで俺はこんなに悩んでるの?」などと日本社会の中での悩みなど、取るに足らないことだと気づかされます。
日本は整然とし過ぎているところがある。「あれしなきゃ」「こうすべきだ」などのことも多い。「みんな同じことをしなければ・・・」などの強い同調圧力もあります。こんなことに縛られてもがくくらいなら、こんな感覚は取っ払うほうがいいと思いました。
周りを気にし過ぎていたら、世界では生きていけない。
インド人は周りが皆同じことを言うからと言って、同調して同じことを言わなければならないなど思いません。自分が思っていることを言う。人間そのままの素直さを教えてくれます。

日本で暮らす自分とは住む世界が違う人と会いたいです。これだけ色々な国があるのに、行かないのはもったいない。いろんな人がいて様々な文化や歴史があり、ステキな家族がある。たまたま自分が日本に生まれて、そこでの生活を当たり前だと思いこんでしまい埋没することには、少し危機感を感じます。

日本人だったらあり得ないと思うでしょうけど、世界中の人々が、日本人のように約束を律義に守るわけではない。インド人は時間にルーズです。インド人ばかりではありませんけどね、アフリカや中東等、多くの国の人々もね。
日本人は、あまりにも厳格に約束を守ろうとし過ぎてしまって、自分自身で首を絞めているところがあります。
世界標準からいえば、日本人は生真面目過ぎですね。日本国内ではそうあった方がいいことも多いですが、世界では「そこまで厳格にやらなくても・・・」など、生真面目であることが常識ではありません
例えば、日本には「過労死」という言葉があります。生きるために働いているのに、働き過ぎて死ぬってへんじゃないですか?
日本も変わりつつあります。不必要な規則、こうであらねばならないなどの脅迫観念に近いような暗黙の了解や同調圧力というのを無くそうとしていますけど。

初めて出会う人とのコミュニケーションの取り方が日本人は下手な方だと思います。
人との繋がりは財産になる。その為にも積極的になるべきです。向こうが嫌がったら、そこでやめればいい。

 

UNICEFの活動

~世界規模の活動に関わろうと思いました~

 

角田:鳥取県UNICEFの活動もされているのですね。どのようなことをされていらっしゃるのですか?

中尾:はい。鳥取県ユニセフ協会というのがあります。恵まれない子どもの支援をしていて、鳥取大学の学長が理事・会長をしています。僕はUNICEFの活動として外国に出たことはありませんが、募金活動やUNICEFの現地での活動の紹介等をしています。

7/25,29に「海外の子どもたちの貧困を考える」ワークショップをやります。日本の子どもたちの夏休みの自由研究として学んでもらいます。

角田:UNICEFの活動を始められた理由を教えて下さい。

中尾:貧困で学校にいけない、ジェンダー差別などの世の中の矛盾に対して、何かできることはないかと思い、世界規模の活動に関わろうと思いました。
社会問題や社会の矛盾に向き合いたいと思い、入りました。

僕は自分から動いて、面白そうならやる。面白くなかったらやめる、ということを心がけるようにしています。


今後の目標

~幸せ、自分の満足のいく人生を追求する~

 

角田:中尾さんの今後の目標を教えて下さい。

中尾:幸せって何かを追求することです。それに沿って生きていきたい。
自分の満足いく人生を追求する。
僕らは、人に流されがちになって苦しむことが多い。僕も前はそうでした。

若い人たちも、時々真剣に「幸せについて」仲間と話してみるのもいいと思います。

 

学生へのメッセージ

 

角田:若い人たちに対して、海外とはどんなものと伝えたいですか?

中尾:若者が海外に出ようと躍起になっていた時代のピークはもう過ぎてしまいました。青年海外協力隊等への応募も少しずつ減ってきています。
おそらく、テロなどが世界各地で多発することによって、「危ない」とか、「何しに行くの 日本にいればいいじゃん?」などの少し後ろ向きの気持ちの方が強く、好奇心や新しい世界へ飛び込む等の、野心的な思いを持つ若者が少なくなったのではないでしょうか。国際化と言いつつ、全体的に内向きになっているイメージがあります。

 

角田:それは良くないのですか?

中尾:個人が考えることなので、良くない、ということはありません。でも、社会全体で考えると、国際競争力や生きる力、コミュニケーション力等、全体的には弱くなっていくと思いますよ。
海外の若者には、もうばんばん自己主張をして、「俺はこう思う!お前はどうだ!?」などと思いをぶつけ合い、交流を深め、自己を高め、ともによりよい社会を目指そうとの思いや熱量の高い人は多いと感じます。日本の若者は自己主張できない、しない人が比較的多いのではないでしょうか。その背景には、控えめであることが奥ゆかしいなどの文化的側面もあるでしょうけど、特に国際化時代の今、自己主張をきちんとして、価値観や考え方の異なる他者と盛んにディスカッションして、多くのものを吸収できる若者が育ってほしいと思います。

石井:やはり、中尾さんにとっては若者にどんどん海外に出て行ってもらって、自己主張してほしいのですか?

中尾:それももちろんのこと、色々な考えを聞いて、自己主張する力をどんどん磨いてほしいと思います。臆病にならず、様々なコミュニケーションを通じて切磋琢磨できる関係を築いてほしいと思います。

大学というところは、自分から動かないと何も得られません。色んな人と触れ合うのが大事だと思います。

 

 

中尾さん、ありがとうございました!
海外のこれからのこと、ご自身のこれからのことを真剣に考えておられていてすごいと思いました。
私は海外に行くことはあまり考えていませんでしたが、海外はただ怖い所なのではなく、自分の自己表現力を高めてくれる場でもあるという事が今回のインタビューで分かり、行ってみたいと強く思いました。
自分にとっても、周りにとっても幸せになるにはどうすればいいのか。それを海外で見つけることも一つの手段ですね。
インタビューさせて頂きありがとうございました。これからも、中尾さんを応援しています!

 

 

メインインタビュアー:角田  サブインタビュアー、議事録:石井

*1:アメリカ同時多発テロ事件。2001年の9月11日にアメリカ合衆国で同時多発的に実行された、過激派テロ組織による4つのテロ攻撃。 Wikipediaより