ぱんぴっと! インタビュー記事

NPO法人学生人材バンク学生プロジェクト「ぱんぴっと!」。鳥取で活躍する魅力的な社会人へのインタビュー記事を掲載していきます。

「お互い様。見えない部分で、いろんなものが回っている」 公益財団法人 とっとり県民活動活性化センター 上山梓さん

 

 

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 目次

 

 

[所属 名前]

公益財団法人 とっとり県民活動活性化センター

上山梓さん

 

 

 

[インタビュアーからのひとこと]

世の中に疑問を持たない生き方は

危険であるということ。

見えていないだけで

いろんなものが回っていること。

 

上山さんの生きてこられた環境や考え方は

驚くほど自分と似ており、

共感する部分が沢山ありました。

 

「お互い様」をもっと皆が意識し合えたら

より助け合える社会になるのではないかなと

感じました。

 

 

 

 

[職業・仕事内容]

Q. ご職業とお仕事の内容を教えてください。

 


A. 公益財団法人 とっとり県民活動活性化センターの

 事務局員をしています。

 

センターはNPOやボランティア、

地域づくり団体を支援するような活動をしています。

 

 

私の担当は民間協働型活動支援といって、

企業さんからの寄付をNPO等の団体に寄贈する際の

仲介したり、社会課題の解決へ向かう団体さんを

支援するためのチャリティーを企画したりする

仕事をしています。

 

 

 

[前職について]


Q. 以前はどのようなお仕事をされていたのですか?

 


A. 塾の正社員をしていました。

 


教育関係にはずっと関心がありました。

でも、「学校」という場所がすごく嫌いで。(笑)

 

 

なんであんななんだろう。

 

 

最近はだいぶ変わってきたのかも知れないけれど、

子どもの育つ環境とか、

結局は大人の都合に合うようにさせられているなって。

大人の都合よく振る舞う子が尊ばれる空間ですよね。

 

 


私は子ども時代、割と「いい子」でいられる

タイプでした。

でもそのままできてしまったせいで

大学とかでつまずいてしまって。

 

ある時、「自分がない」ということに気づくんです。

 

その時に、「たみ」(湯梨浜町にあるシェアハウス)のメンバーと関わるようになった。

 

それで、自分が何もないというか、

世の中に疑問を持つ感覚がないことに気づいた。

 

じゃあ、自分の感覚も養いながら、

「自分はどうしたら自分と同じような人間を

 生み出さないようにするか、

 それは教育を変えていくのか、

 教育じゃない場所をつくっていくべきなのか」

を考えるようになりました。

 


NPO法人遠足計画」では、

どちらかと言うと教育ではない場所、

いかに子どもたちの自主性や自発性を

発揮できるかというところをつくる。

 

 

一方、「因幡の手づくりまつり」は割と教育現場的。

いかに子どもたちの手を健やかに育てるか、という、

要は理想像があって教育的なアプローチをするんですね。

 

だから両面で、それらを組み合わせる場所は

ないかな、と模索しながらやってきて、

今があるという感じです。

 

 

 

[きっかけ]

 

Q. 塾で働くことを、

  どうして辞めようと思ったのですか?

 


A. 教育に興味があって就職したけれど、

  周りに絶望したんです。

 


みんな夢を持って入社したはずなのに、いつの間にか

お金の売り上げを第一に考えるようになるところ、

あるいは、

「いくら性格が悪くても稼ぐやつが一番えらい」

みたいな風潮に嫌気がさして。

 

それは会社的には悪いことではないけれど

すごく志を持って経営されてる人が

「あいつは売り上げ大したことないから」と

評価されることとか、

「お金が稼げたらそれでいい」という考え方、

毎晩社長の悪口を言い合うとか、

ストレスは溜まるし

全然夢がないところが嫌になって辞めました。

 

 


あとは、「限界を感じた」ところですかね。

塾に来る子のほとんどは、親に言われてやって来る。

自分で勉強したいと思ってきているわけではないから

限界もあるし、本人が勉強に取り組めないのには

いろんな要因がある。

 

それは学校の環境であったり家庭の環境であったり、

そこを今の塾だけでカバーするのは難しいなと

思いました。

 

 

 

[充実度を感じるとき]

 

Q. 今の生活のどんなところに充実度を感じますか?

 


A.  大学の時から通っていた「三八市」(朝市)に

  関われることはとても嬉しいです。

 


それから、NPOやボランティアの考え方は

自分の肌に合うんです。

 

 

特にセンターのトップの方は面白い方で、

「私はこういう人のもとで働きたい!」と思う人。

毎日勉強になるし議論もしている。

そんな環境の中で、自分の知識や経験を積んでいける。

楽しいことは楽しくやりながら、実用性を考えていく。

「この地域になぜ三八市は必要か」ということを

より客観的に分析していくのが楽しいです。

 

 

 

地元が閉鎖的だったので、

それをどうしたらいいのかという問い、

近所の人とどうやってコミュニケーションを

とっていくかをずっと自分のなかで課題として

持っています。

 

 

「いい地域」というのは、いろんな人と顔を合わせて

過ごしやすい空間であることだと感じます。

家と職場や、趣味嗜好の合う第三の場所、

サードプレイスとかではなく、

すぐ近くのコミュニティづくりが、結果的には

防災やセーフティネットに結び付くのかな。

 

「仲良く」とまではいかなくても、

互いを認め合えるコミュニティをつくることは

大事なんじゃないかなと思います。

それが地元でできなくても、今住んでいる松崎で

意外とできるんじゃないかなって。

 

そういうことを考えながら、

人が少ないなかで私たちはどうしたらいいかなって、

支え合える社会をつくっていくことをミッションに

活動しています。

 

 

 

[大切にされている考え方]

 

Q.  生きていく上で大切にされている考え方は

   ありますか?

 


A. 「お互い様」ですかね。

 


最近よく、「ごみ捨て当番面倒くさい」とかって

聞きますよね。地域のしがらみを嫌がる気持ち、

私もよく分かるんですけど、一方で多分

マンションとかだったら公共的な部分は

お金を払ってやっている。

でも本来はそれってそこに住んでいる人たちが

協力し合って自分の住んでいるところを

良くしていったもので、

その機能がどんどん薄れている。

そこでコミュニケーションがなくなっている。

 


そもそも皆で使うものには税金や共益費など

何かしらの形で払っている。

払っている気はないかもしれないけど。

地域ではそのお金が、自治会費や区費といった

「別でください」と見える形になっているだけ。

 

でも本来は同じことですよね。

 

例えばごみ捨て当番とか、

お互いがお互いに協力し合って生きているんだから、

面倒くさいけど必要なこと。

できない人がいるなら仕組みを変えたらいい。

町内活動だから参加しないというのは、

違う話じゃないかな。

 

自分だけ負担を持っているんじゃなくて、

自分も周りの人に育てられてきたので、

それは「お互い様」として自分の周りの人たちを

手助けしていくというか。

お互いに助け合って生きている社会だから、

自分が恩を受けた分は

誰かに返さなくちゃいけないですよね、

 


分かりやすい話で言うと、

「車産業はお金になる」と言うけれど、

でもあれって莫大な下積み産業があるんですね。

 

国が道路をつくらないと車屋さんは儲からない。

本当はそこにお金がかかっているのだから、

「自分がいい車をつくって売ったから自分が偉い」

ではない。自分だけの手柄じゃないですよね。

 


子育てや介護も同じこと。

お母さん一人が育てるのではなくて、

いろんな人たちが一緒にいろんな子どもたちを

支えて育てていかなきゃいけない。

今の社会はそこがなぜか分断されてるな、と思います。

 

でもそう思うのは、

「お互い様」の部分が見えていないから、

見えているという感覚が失われているから

なんだと思います。

 

 

見えないところだけれども、

実はいろんなものが動き循環しているところに

気づくこと。

 

 

私がやっていることも、恩返しというか、

「自分はいろんなものを受けて生きているから

 それ以上のものを返していこう」という部分に

近いかなと思います。

 

 

 

 

[学生へのメッセージ]


Q. 社会や若者に対して思うことはありますか?

 


A. なんでそこが嫌なのか、

  気になるのかを考えることは大事なこと。

 


私は大学に入るまで淡々と生きてきたから

つまずいたんですよね。

 

 

社会常識とか法律とかも、

「それは従うものである」と思っていて、

考えることもなかった。

 

 

そこに何も疑問を抱かずに生きてきたけど、

この辺(松崎)に住んでいる人やアーティストとかは

そういう部分にすごく敏感。

 

「なんでこんなに理不尽なんだ」とか、

「まっとうに考えたらおかしいことだ」と

言える人たちに囲まれて過ごしてみて初めて、

「たしかに!」と気づくようになった。

 

そこの感覚を養うというか、気づいたことに対して

いかに声をあげられるのかということが

今の社会には必要な気がします。

 

「おかしいんじゃないか」と言ってみるとか、

理不尽なことへの怒りを持つとか。

 

 

そのためにはまず、社会を知ること。

 

 

いろんな課題や問題に対して、

自分たちが動かしていかないと変えられない。

何事も自分が意識しないと、変わらないですからね。

 

 

やりたいことをやったり、

気になったものに頭を突っ込んでみるとか、

そういうところから始めてみたらいいんじゃないかなと

思います。

 

 


あとは、誰と出会ってどう付き合うかが大事。

 

 

自分は「たみ」に突っ込むことで、

そこでの空気感とかいろんな人と出会っていったから

今の自分があるのだと思っていますし、

 

「話す」(言葉)だけではなくて

一緒に何かやっていくうちに分かってくることも

たくさんあります。

 

 

時間が経って、感覚として自分のなかに落ちてくる

ということもあるから、「出会い」だけでなく、

出会った「その後」も大切にしてほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

インタビュアー : 佐伯&石井

文責 : 佐伯